レゲエを必要以上に楽しむために
レゲエを必要以上に楽しむために
【保存版】SOUND CLASH用語辞典
SOUND CLASH!!
それはジャマイカが生んだレゲエミュージックには欠かせないカルチャーであり、血湧き肉踊る「音と音とのバトル」!!
参加者たちはMCでのDISSり合いはもちろんのこと、ここでしか聴けない「DUB PLATE」を繰り出し、熱き戦いを繰り広げる!!
日本には世界チャンピオンMIGHTY CROWNの存在もあり、広く知られている音楽文化であろう。
そんなMIGHTY CROWNも今年2016年にはめでたく結成25周年を迎え、また「サウンドクラッシュ」という文化もレゲエの枠を超え、独自の広がりを見せている。2014年にUKで開催された『RED BULL CULTURE CLASH』においては、ジャンルを横断して世界TOPのDJ陣が集い「サウンドクラッシュ」で競い合った。そんな同イベントには1万人以上(!)の動員があり、シーンをNEXT LEVELに推し上げていることはアンテナの高いロカチャン読者の皆さまは既にご存知だろう。
そんな今だからこそROCKERS channelでは、いま一度サウンドクラッシュにまつわるエトセトラをしっかりと紹介する必要があると考えた。 最近このカルチャーに興味を持った人はもちろんのこと、「何を今さら」な人まで、サウンドクラッシュを更に楽しむためのガイドになれれば幸いだ。
– 目次
●45
●BASS ODYSSEY
●BIAS
●BILTMORE TUNE
●BLACK KAT
●COUNTER ACTION
●DAVID RODIGAN
●DUB PLATE
●FIRE LINKS
●FLOP
●JUDGEMENT
●JUGGLIN
●KILLAMANJARO
●KING ADDIES
●MIGHTY CROWN
●PLAY BACK
●SOUND SYSTEM
●RED BULL CULTURE CLASH
●RICKY TROOPER
●TONY MATTERHORN
●TUNE FI TUNE
45
[
[フォーティーファイブ]
「DUBではない普通の曲」の意。
レゲエダンスホールの世界では主流のアナログ7インチは45回転のため、昔はDUB PLATEと区別するために市販のレコードをこう呼んだ。PCでのPlayが主流となった現在でも、サウンドクラッシュにおいては「45ROUND」など「DUB禁止」のターンを指す言葉として残っている。
BASS ODYSSEY
SQUINGY
[ベースオデッセイ]
天才セレクター・SQUINGYが世界のTOPに押し上げた、ジャマイカを代表するサウンドのひとつ。数々の世界的なクラッシュ・タイトルを保有している。
MIGHTY CROWNとTUNE FI TUNEで死闘を繰り広げた、2007年の『WORLD CLASH “GAME OVER”』などを覚えている日本のクラッシュ・ファンもたくさん居ることだろう!!
SQUINGYは病に侵され、2009年に37歳という若さで亡くなるも、彼の遺志を受け継ぎ、世界中のDANCEを毎夜沸かしている!
BILTMORE TUNE
[ビルトモアチューン]
90年代NYでクラッシュのメッカだった「Biltmore ballroom」という伝説の箱があり、そこでよくかかっていた定番のクラッシュソングのこと。
用例:「●●サウンド、今日はやたらベタなBILTMORE TUNE連発してるな」
BLACK KAT
[ブラックキャット]
“WAR TANKER(戦車)”の異名を取る、PINK PANTHERが率いたジャマイカのBIG SOUND。
こちらも百戦錬磨のつわ者サウンドであるが、30代的には第三次レゲエブームのまっただ中であった2003~04年にかけて、『WORLD CLASH NY』『UK CUP』『WORLD CLASH JAMAICA』と、当時の“世界三大クラッシュ”を立て続けに制覇したことも思い出深いエピソードであろう。
PINK PANTHERは近年B.K.を脱退後、自身のサウンドを結成し活動中であるが、全盛期に比べると活動は沈静化している模様。
COUNTER ACTION
[カウンターアクション]
相手サウンドがPlayした曲やMCに対して関連性を持たせて返すこと。
「コントラクション」とか「カンタラクション」とか言ったりするが全て意味は同じ。
DAVID RODIGAN
[デビッドロディガン]
ヨーロッパを代表するレゲエセレクター。50年近い(!)キャリアを誇り、2011年にはエリザベス女王より大英帝国勲章を拝し、“sir”の称号を得る。
その才覚はサウンドクラッシュにおいても遺憾なく発揮され、85年BARRY Gとのラジオクラッシュに始まり、歴史に残る名勝負の数々を繰り広げて来た。
2014年開催された『RED BULL CULTURE CLASH』ではDRUM&BASS界のTOPに君臨するCHASE&STATUSとタッグを組み『REBEL SOUND』として出場。
RIHANNA『WE FOUND LOVE』のDUB(!!!)という、鬼のような飛び道具を繰り出し、見事優勝を遂げる。
DUB PLATE
[ダブプレート]
レゲエサウンドがアーティストに依頼して制作する、一点モノの曲のこと。『DUB PLATE』の名の如く、昔はアセテート盤に直接カッティングして、文字通り「世界に1枚だけのレコード」を作っていた。
レゲエのサウンドはこの『DUB PLATE』を多く持っていることがステータスのひとつであり、クラッシュの際には当日用の「仕込みDUB」なんてものまで飛び出し、勝敗を分ける大きなファクターとなる。 ギャラもアーティストによってピンキリで、プロモーションで無料で録ってくれる場合もあれば、一曲につきゼロの数が6ケタまで行く場合も!?
一例をあげると、日本の超有名サウンド・MIGHTY CROWNも元々はクラッシュの現場で竹中直人のDUBなどをかけ、有名になった人たち。
DUBのカッティングスタジオとしてスタートした、ご存知“カエルスタジオ”。
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DUBのカッティングスタジオとしてスタートした、ご存知“カエルスタジオ”。
FIRE LINKS
[ファイヤーリンクス]
レゲエセレクターのアイコンの一人。
90年代『BODY GUARD』SOUNDにて数々の修羅場をくぐり抜ける。
ソロに転向後はJUGGLINを主戦場としつつも、クラッシュSOUNDとして今もなお第一線で活躍。
獲得した世界タイトルこそ数少ないものの、サシのタイマンクラッシュではたびたび世界の強豪サウンドを打ち負かし、CLASHシーンにおける存在感は現在も衰えていない。
FLOP
[フラップ]
「スベった」の意。
JUDGEMENT
[ジャッジメント]
今や伝説となった日本のサウンド。99年、UKにて開催されたサウンドクラッシュ「Global Gold Cup」に日本代表として出場し、BASS ODYSSEY(JA)、LP international(NY)など、錚々たる面子を向こうに回し見事優勝を飾る。
これは同年のMIGHTY CROWNの『WORLD CLASH』初優勝より一ヶ月ほど早い出来事であり、事実上の「日本初のサウンドクラッシュ世界チャンピオン」となる。
JUGGLIN
[ジョグリン]
「CLASH」の対義語。レゲエダンスホールの中でもいわゆるPartyスタイルのことを指す。
もちろんCLASHで有名になったサウンドと言えど、普段からCLASHばかりしている訳ではないし、JUGGLINのイメージが強いSTONE LOVEやFIRE LINKSも時にはサウンドクラッシュに参戦したりする。
ちなみに昔ながらのJUGGLIN SOUNDを「SOUL SET」と呼んだりするのは、STONE LOVEが元々ソウルばっかりかけるサウンドだったため。
2000年代初頭、NYで行われた45クラッシュ。この時はMIGHTY CROWNが優勝!
2000年代初頭、NYで行われた45クラッシュ。この時はMIGHTY CROWNが優勝!
KILLAMANJARO
JARO-ANNIVERSARY
[キラマンジャロ]
ジャマイカの老舗サウンド。元々はNINJA MAN、SUPER CATらも輩出した名門RUB-A-DUB SETであったが、90年代RICKY TROOPERの出現により「超戦闘型・CLASH SOUND」として生まれ変わる。
63年より続く永い歴史の中で録り貯められて来た数々のお宝DUBが売りで、亡くなってしまってもう二度と録音が出来ないLEGENDアーティスト達のDUBで、数々のSOUNDを葬り去って来た!!
KING ADDIES
kingaddies-1994
[キングアディーズ]
80年代DANNY DREAD、90年代TONY MATTERHORN・BABY FACEのコンビで一時代を築いたNYのBIGサウンド。
95年ジャマイカはポートモアで行われた「KILLAMANJARO vs KING ADDIES」の一騎打ちは一万人(!)を集客し、伝説中の伝説として今も語り継がれている。
MIGHTY CROWN
MIGHTYCROWN-2016
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[マイティクラウン]
説明不要。日本が生んだ世界TOPクラスのREGGAE SOUND CREW。
1999年の『WORLD CLASH NY』優勝を契機に、国外で数え切れないほどのサウンドクラッシュに参戦し、「非・黒人REGGAE SOUND」にとっての可能性の扉を次々に開いてきた。今までに獲得した世界タイトルの数は計7個にも及ぶ。
また、“聖地”ジャマイカで開催されたサウンドクラッシュの世界戦で、ジャマイカ人以外のサウンドで初めて優勝したのもMIGHTY CROWN(WORLD CLASH JAMAICA 2007)。
今年2016年は結成25周年を迎え、数々のBIGプロジェクトも水面下で進行中。ハマが生んだ『FAR EAST RULAZ(極東の覇者)』からますます目が離せない。
PLAY BACK
[プレイバック]
前にかかった曲をもう一度かけてしまうこと(※ただしDUBであればその限りではない)。
レゲエのサウンドplayにおいては禁忌のひとつとされ、2000年代にあったクラッシュ『衝撃 2003』では、Play BackしてしまったCAPTAIN-Cが、次にPlayしたINDEPENDENTに山口百恵『プレイバック pt.2』をかけられ、ディフェンディングチャンピオンであったのにも関わらず、一番最初に脱落してしまった、なんてことも。
SOUND SYSTEM
[サウンドシステム]
レゲエのPARTYではお馴染みの巨大スピーカー。
どんな僻地の何もない広場や野原だって、サウンドシステムを積んだトラックがやってくるだけで、あっという間に野外パーティー会場に変えてしまう魔法のアイテム。ジャマイカにおいては1950年代から庶民にとっての重要な娯楽であり、サウンドシステムが爆音を鳴らす星空の下のダンスホールから様々な流行が発信されてきた。
元々、サウンドクラッシュではMC、選曲はもとより各サウンドクルーが持ち込んだサウンドシステムの“音”も勝負のポイントだった。
国内においては、1998年に「MIGHTY CROWN vs TAXI Hi-FI vs TOKIWA」の、当時の日本を代表する3サウンドで争われた『頂点』が、システムも持ち込んでの伝統的なクラッシュの形式で開催された一例。
RED BULL CULTURE CLASH
[レッドブルカルチャークラッシュ]
日本でもお馴染みの飲料メーカー・RED BULLが主催するサウンドクラッシュ。
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各ジャンルからTOPのDJ陣が参戦する「音の異種格闘技戦」で、「レゲエ」や「ジャマイカ」の枠を超えた、一大エンターテイメントに成長している。
BOY BETTER KNOW(グライム)、STONE LOVE(レゲエ)、REBEL SOUND(ドラム&ベース&レゲエ)、A$AP MOB(ヒップホップ)らがエントリーした2014年度の大会は1万6千枚のチケットが完売するほど!!
RICKY TROOPER
[リッキーチューパー]
サウンドクラッシュの神様。
1989年、KILLAMANJAROにDeeJayとして加入。1993年「STONE LOVE vs METRO MEDIA vs KENYATT vs KILLAMANJARO」戦において、JAROのメインSELECTORの代役で出場した際のPlayが反響を呼び、以後JAROの看板SELECTORとして活躍。
“同じ曲の二度がけをするな!(Play Back)”や“あらかじめ相手が言いそうなことを予想しておいて、それを攻撃するDUBを仕込んで、潰す(Counter Action)”など、現在のサウンドクラッシュにおける基本ルール・戦法は、すべてTROOPERが歴戦の中で慣例化させたものであり、サウンドクラッシュが基本的には大金を投入してのDUBの撃ち合いであるのも、TROOPERが
“BIG SOUNDは誰でもかけれる45じゃなくて、EXCLUSIVEなDUB PLATEでサウンドを殺すんだ!!”
と言い出し、事実それで勝ち続けたから定着したものである。
ちなみにそのTROOPER在籍時のKILLAMANJAROを1999年のWORLD CLASH NYで打ち負かし、世界的な注目を浴びたのがMIGHTY CROWNである(結局その後TROOPERはJAROを引責辞任)。
何故MIGHTY CROWNが世界中で賞賛されるのか、よく分かるエピソードのひとつ。
TONY MATTERHORN
tonymatterhorn
[トニーマタラン]
80年代後半、ジャマイカのサウンドINNER CITYでキャリアをスタートさせる。その後NYに渡り、KING ADDIESサウンドにてセレクターBABY FACEとのコンビで一時代を築く。
独立してソロ活動を始めてからも、CLASH、JUGGLIN両方のシーンで第一線で活躍。
2006年には自身の曲『DUTTY WINE』をリリースし、大ヒットへと導く。
REGGAE界最重要セレクターの一人である。
※ちなみに、「MATTERHORN」とは、ジャマイカの煙草の銘柄であり、彼が時折クラッシュで「シガレットボーイ!」とかDISSられてるのはそれが由来。
TUNE FI TUNE
[チューンフィーチューン]
複数のサウンドで、一曲ずつ交代で曲をかけること。
クラッシュでは最終判定の前に設けられ、主に5曲ずつ、10曲ずつ、のかけ合いが通例となっている。
SOUND CLASHは「偉大なる音の格闘技」
ジャマイカンミュージックの歴史上、最初のサウンドクラッシュは1952年のTOM THE GREAT SEBASTIANと、COUNT NICK THE CHAMPのクラッシュだと言われている。
まだジャマイカではSKAの誕生以前で、人々はダンスホールで流れるアメリカのR&BやJAZZで踊っていた時代。
そう、レゲエの「レ」の字もないような時代から、ジャマイカには「SOUND CLASH」という文化が存在していたのである……!
それから半世紀以上が過ぎ、カリブの小さな島国で生まれたこのカルチャーは今や世界中に広まっている。
かく言う自分も、初めて「サウンドクラッシュ」というものを観た時は衝撃を受けたものだ。何とも言えない緊迫感に包まれた雰囲気。かつて知ったる曲は全くちがうトラックに替えられていて、リリックも超攻撃的にカスタマイズされている。そして、「お前はお釜だが俺はお釜じゃねぇ!!」なんて、いい歳こいた大人が口汚く罵りあっている(笑)。
まさしく、「普通の音楽」では絶対にあり得ない文化。
でも、だからレゲエが好きになったんだと思う。
もちろん、何も知らなくても楽しめるが、知っていると「更に楽しめる」のは当たり前。
ぜひ読者の皆さんも
「この前のクラッシュ、あのコントラクションはないよなー」
とか
「●●サウンドが勝ったけどあれは絶対バイアスだぜ! あいつら地元から何十人も応援団連れてきてたし!!」
とか、サウンドクラッシュを肴(さかな)に、色々言い合ってみてほしい。
何てたって、これこそサウンドクラッシュが「音の格闘技」と言われる所以(ゆえん)。やる側だけでなく、見てる側も熱くなれるのがこの文化の醍醐味なのだから!!
最後になったが、けして安くはないお金をダブプレートやサウンドシステムに注ぎ込み、日々牙を研いでいる全てのサウンドマンたちに尊敬と感謝を。
勝っても負けてもあなた方がオレたちに見せてくれたものは「プライスレス」さ。
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